blognews 相続税を払えますか?払えなきゃ物納すればいいと思ったら大間違い

宅建士26年目で不動産コンサルタント・リアルター代表の坂口貴長隆です。
先日、某レストランでランチをしていたところ、隣の席にいたアパートや畑を持っているらしいお爺さんが大きな声で「相続税が払えんかったら、(物件を)国にやったらええんや」と物納について間違った会話をしていたので、もしかすると知らない人も多いのでは?と思い、今回、この場で簡単に転ばぬ先の杖としての記事を残しておきます。
相続財産が現金や換価の早い株式などが大半の方は特に問題ありませんが、複数の不動産を相続する予定がある方、特に遠方の別荘地や山林などが含まれている場合、相続発生時の「納税資金」について深刻に考えておく必要があります。
不動産の資産が多いと、「手元に現金がなければ、不要な土地を国に物納(ぶつのう)すればいい」と安易に考えがちですが、いざという時にその目論見は大きく外れることになります。
物納と相続財産に関して注意するべき点
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相続税は「現金一括納付」が原則
相続税は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に現金で納付しなければなりません。不動産が多いと相続税評価額ばかりが高く跳ね上がり、納税用の現金が不足するケースが多発します。 -
「物納」のハードルは極めて高い
物納は、延納(分割払い)を利用してもなお現金納付が困難な場合にのみ認められる最終手段です。「不要な土地だから国に引き取ってもらう」というような、都合の良い制度ではありません。 -
「管理処分不適格財産」は物納できない
国はどんな土地でも受け取ってくれるわけではありません。境界が不明確な土地、抵当権がついている土地、そして買い手がつかないような遠方の別荘地や、手入れされていない山林などは、「引き取っても国の管理負担になるだけ」とみなされ、物納を却下される可能性が極めて高いです。 -
維持管理コストと所有者リスクは続く
物納が却下され、売却もできない状態の土地であっても、固定資産税の負担は続きます。さらに、倒木や土砂崩れなどで近隣に被害を与えた場合の損害賠償責任など、管理責任は所有者に重くのしかかり続けます。
事前に準備しておくべき点
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所有不動産の全容把握とリスト化
どこに、どのような不動産(山林や原野も含む)があるのか、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書や役所の名寄帳を活用して漏れなく把握しておく必要があります。 -
「評価額」と「実勢価格」のギャップの確認
相続税計算用の評価額と、実際に市場で売れる金額(実勢価格)は異なります。山林や別荘地は、評価額に対して実際の売値が著しく低い、あるいは買い手が全くつかないことが多いため、机上の計算だけでなく、プロによる現実的な査定価格を把握しておくことが重要です。 -
境界確認と権利関係の整理
隣地との境界が明確になっているか確認し、問題があれば生前に測量等を入れて解決しておきます。また、古い抵当権が残ったままになっていないか等、登記簿謄本も確認しておきます。 -
納税資金のシミュレーションと家族会議
現状で相続が起きた場合、いくらの相続税がかかり、現金はいくら用意できるのかを計算します。不足する場合は、生命保険の活用や、優良資産の一部売却による現金化などを生前のうちに家族で話し合っておく必要があります。
まとめ:なぜ「負動産」はすぐにでも売却した方が良いのか
将来的に利用する予定がなく、収益も生まず、ただ税金や管理費だけがかかる不動産は、資産ではなく負担を強いる「負動産」です。遠方の別荘地や山林といった負動産は、「すぐにでも売却(処分)に向けて動き出すべき」です。
その最大の理由は、不動産の「流動性の極端な低さ」にあります。
需要のないエリアの土地や山林は、売りに出したからといってすぐに買い手が見つかるものではありません。数ヶ月、場合によっては数年単位で時間がかかるのが現実です。いざ相続が起きてから「納税のために10ヶ月以内に売りたい」と焦っても、買い手が見つからずタイムオーバーで納税資金がショートするか、足元を見られてタダ同然で手放すことになります。
また、相続発生後には、2024年4月から義務化された「相続登記」の手間や費用も加わります。もし売却を後回しにして次の世代へ放置されれば、相続人がネズミ算式に増えて権利関係が複雑化し、売却手続き自体が事実上不可能になるリスクも跳ね上がります。
価値が下がり続け、管理コストやリスクだけを垂れ流す不動産は、所有者の判断能力がしっかりしている生前のうちに、あるいは相続直後の少しでも早いうちに手放してしまうことが、残される家族を金銭的・精神的負担から守るための最大の相続対策となります。
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